【ゲスト回】次世代のAIレセプトチェッカーが変えるクリニックの未来_『院長が悩んだら聴くラジオ』シーズン2_エピソード110全文書き起こし

【ゲスト回】次世代のAIレセプトチェッカーが変えるクリニックの未来_『院長が悩んだら聴くラジオ』シーズン2_エピソード110全文書き起こし

DOCWEB『院長が悩んだら聴くラジオ』この番組は開業医の皆さんが毎日機嫌よく過ごすための秘訣を語っていく番組です。 通勤時間や昼休みにゆるっとお聞きいただけると嬉しいです。

(高山)おはようございます。パーソナリティのDOC WEB編集長、高山豊明です。

(大西)おはようございます。パーソナリティのMICTコンサルティング、大西大輔です。

(高山)院長が悩んだら聞くラジオ、第110回始まりました。大西さんよろしくお願いします。

(大西)よろしくお願いします。今日のテーマは何でしょうか?

(高山)前回に引き続き、レセプトの自動化ということで、熊沢社長をお迎えして、いよいよ具体的なお話を伺っていきたいと思います。

お願いします。

(熊沢)お願いいたします。

(大西)前回、熊沢社長のプロフィールを伺いましたので、今回はさらに深掘りして、どんなサービスなのかを聞いていければと思います。

今、熊沢社長のホームページを見ながら、元々はどういうプロセスでここに行き着いたのかすごく興味があるので、その辺りを聞きたいですね。

(高山)ではこの後、熊沢さんの背景も含めて伺っていきたいと思います。よろしくお願いします。

(熊沢)よろしくお願いします。

レセプト業務の自動化に取り組む背景

(高山)自己紹介の続きになるかもしれませんが、なぜレセプト業務の自動化に取り組もうと思われたのか、きっかけはあったのでしょうか。

(熊沢)弊社はミューテックスという会社ですが、元々医療業界をやっていたわけではなく、受託開発を行っていた会社になります。

医療業界の人間はほとんどおらず、情報系やコンピューターサイエンスを専門としたメンバーがほとんどです。

私自身も東京大学の電子情報工学科に在学中に創業したというバックグラウンドになります。

なぜレセプトの分野に踏み出したかと言いますと、とある病院から院内のDXなど全体的に見てほしいとご依頼があり、院内を一通り見学させていただいたことがありました。

病院も大きく、DXできている部分とできていない部分がある中で、我々が一番力を出せる部分はどこかを考えました。

例えばSPDだとどうしても物理的なハードウェアが絡む部分も多いですが、レセプトはソフトウェアで完結しているところが多いという特徴があります。

かつ、診療報酬業務は複雑でハードルが高い部分であったため、我々の長所が特に活きる分野なのではないかと考え、レセプト業務の自動化に取り組み始めました。

(高山)データサイエンスの専門家として見てみて、レセプト業務はこんなに煩雑なのかという感想や、どういう風に思われましたか。

(熊沢)非常に煩雑だという印象を受けました。

法律の大量の文章があり、それを元に業務を行わなければいけません。

病院だと複数診療科があり、知識の適用範囲も広い中で非常に複雑です。

電子点数表もあれだけ分厚いもので、そこからレセプト業務や点検を行っていると思うと、かなり複雑だなと感じました。

既存のレセプトチェックシステムの課題とAIによる解決

(高山)大西さんから何か質問はありますか。

(大西)まず一番質問したいところは、マイティチェッカーやベテランくん、レセプト博士といった既存のレセプトチェッカーは参考にされたのでしょうか。

(熊沢)実際のチェックソフトをすごく触り込んだわけではありませんが、参考にしている部分はあります。

ただ、根本的な考え方として、前回大西様にもおっしゃっていただいた通り、既存のレセプトチェックシステムはいわゆるルールベースで、ロジックツリーなどを裏側で構築しているシステムです。

レセプトのルールは言語表現なので、それだけだと限界があるというのは根幹として思っていました。

そのため、根本的な部分から考え方を変えて取り組まなければいけないと感じていました。

(大西)レセプト点検は人間がしてきたので、どうしてもばらつきがあると思うんですよね。

現場では3人から5人ぐらいのメンバーが別々に点検をしていて、ルールが統一されていないのはよくないと感じていました。

その辺りの統一ができるというのは一番大きいところかなと思います。

チェッカーの仕組みを見ている限り、例えば一回学んだことに対してちゃんと言語化してくれて、こういうチェックを働かせていますよと示してくれるので、ばらつきが減るなという感じはしますね。

(熊沢)ありがとうございます。

弊社のシステムの大きな特徴として、チェックのルールや、どういう理由でチェックしてどう修正すべきかという方針などを言葉で扱っているところが挙げられます。

そうすることで、社保の点検条件や統一次例、疑義解釈なども基本的には言語で扱われており、その言語をもとにレセプトを解釈するという業務を直接システムに落とし込んでいます。

おっしゃっていただいた通りばらつきも減りますし、業務者によって解釈が変わるといったことが極力ないようなシステム構築を心がけています。

レセプト業務全体の省力化と収益改善

(高山)私の印象ですが、大西さんからチェックという観点がありましたが、熊沢さんが目指しているのはチェックの部分だけでなく、レセプト業務全体の自動化や省力化を目指されているんですよね。

(熊沢)おっしゃる通りです。

イメージとしては、オーダーの塊としてレセプトが出来上がり、そこから点検がスタートします。

査定が来そうな時に、算定項目を全部削れば査定はなくなりますが、それでは診療報酬が得られません。

コメントを追加するのか、詳記を書くのか、病名を足すのかといった判断が一番難しいところだと思います。

そこについてAIで非属人化、標準化を進め、現場の作業者の知識の偏りによって診療報酬の収益が変わることがないようなシステムを目指して開発しています。

(高山)万が一返戻が来た場合の次の作業や、再請求、未収金の回収といったところもレセプト業務の一環だと思いますが、その辺りも省力化していこうというお考えでしょうか。

(熊沢)おっしゃる通りです。

我々のシステムのコンセプトとしては、業務効率化と、正しい請求業務を行うことによって取りはぐれをなくすという2つが主にあります。

返戻や査定を完全にゼロにはできないものの、後からでもしっかり回収し切る部分は非常に重要だと捉えています。

返戻や査定が返ってきた場合、対応方針を決定して再作成や再審査請求を行います。

どのように対応するのがベストで、その方針によってどう修正するのかがレセプト業務で一番難しいところであり、従来のロジックベースのチェッカーではできなかった部分だと思っています。

そこを解決していくことが我々の根本の目指している部分です。

点検で指摘されるエラーの傾向と導入成果

(高山)まず病院への導入からスタートしているとお聞きしていますが、チェックしてみたら回収できていないものがたくさん見つかったというお話について、お話しできる範囲で具体的にご紹介いただけますでしょうか。

(熊沢)点検の段階で分かるものは大きく2パターンあると思っています。

一つは査定です。

査定もさらに2つに分かれまして、併算定ができないから削らなければいけないような算定項目の修正が必要なものは、増収に繋がるわけではありません。

もう一つのパターンとして、病名やコメントを入れれば通ったはずであるような査定があります。

これがA査定やB査定と呼ばれるもので、取りはぐれに繋がりやすい部分です。

我々のシステムで点検してみると、過去のA査定やB査定が8割から9割防げたという病院も結構あります。

金額にすると月あたり数百万円から1000万円近くになるケースもありますので、一定の成果は出せていると思います。

返戻に関しては未収債権なので、一旦売り上げには立っている状態から回収する部分です。

病院によっては回収漏れや貸し倒れになってしまう債権が出てきます。

ここに関しては徹底的にデータベース化して、人で管理しているものをシステムで管理するようにし、院内で誰もが見られる透明化した状態にします。

最初にデータをいただくと忘れていたようなものが結構出てくるので、そういったところも回収できるようにさせていただいているのが現在の状況です。

AIを用いた新たな業務プロセスの構築

(高山)レセプト業務を担っているスタッフ側とカルテを書いている医師側でコミュニケーションが分断されているとうまくいかないことがあると思いますが、コミュニケーションのしやすさも機能に盛り込んでいるのでしょうか。

(熊沢)ここは特に難しいところでして、現状だと病名を増やしたり詳記を書いたりするためには医師に依頼しなければなりません。

これを紙に書いてお医者さんにお渡ししている病院も多いと思います。

我々はまだ電子カルテとの直接的な連携には至っていません。

理想的には電子カルテと連携し、我々のシステムからカルテの方に病名を入れてくださいというポップアップが出たり、メモ書きが残ったりする状態を目指して、現在POC段階で進めています。

(高山)順調にサービス導入が進んでいるということですが、どんな点が一番評価されている感じでしょうか。

(熊沢)一番は点検時の精度の良さです。

必要なエラーが出てくることと、不要なエラーが出てこないことの2点があります。

怪しいものを全て出す設定にすればカバーはできますが、そうなるとレセプトがエラーで真っ赤になり、直さずに出してしまうケースもあります。

どれが本当に修正すべきで、どれが問題ないのかを判断し、必要なエラーだけが出てくるのが理想的なチェッカーの姿だと思っています。

我々のシステムはAIがチェックし、本当に修正が必要なものだけを出します。

出てくる数も少なくなりますし、直す必要があるものだけが来る状態の方が遥かに業務がしやすいということで、一番評価いただいている部分かと思います。

(高山)スクリーニングされた状態で必要な作業だけできるというのは非常に省力化になると思います。

今後クリニックが使うにあたって、クリニックですと事務方が任されていて先生はあまり絡んでこなかった世界ですが、先生が扱いやすいものになっていくのか、どんなイメージをお持ちでしょうか。

(熊沢)レセプト業務の作業者がいない状態でもクリニックの請求業務が回る世界は実現可能だと考えています。

医師が病名を足したり詳記をつけたりする以外の業務は、全てAIエージェントに置き換えていくイメージです。

下書きのレセプトができるところまでは今の電子カルテやレセコンでできています。

そこからAIが点検し、修正コメントや傷病名の追加提案を行い、カルテ側に修正が必要な部分だけが提示されます。

それを修正してもらえれば、あとはAIが自動でレセプト業務を完了させてくれるようになります。

部分的な機能としてはすでに検証できているところも多々ありますので、近い将来、残業してレセプト業務を行うスタッフが一人もいないようなクリニックの事例を作っていけると思っています。

電子カルテ連携とAI導入の壁

(高山)クラークすらいらなくなってくる世界が見えてきた気がします。

(大西)実際に僕のお客さんでもレセプトチェッカーを入れて残業がほとんどなくなった事例がありますが、導入してから成果が出るまで3ヶ月ほど伴走プロセスに時間がかかりました。

そこからAIによって短縮できて、1、2回かければ良くなるとなるといいですね。

また、現場でよく言っているのが、診察行為の時にチェッカーを走らせないと取り漏れは防げないということです。

レセプト点検はマイナスの業務なので、本当にお金をかけてほしいのは医師です。

医師が正しい請求を分かった上でオーダーすれば間違えません。

クラークという名前は変わると思いますが、医師の隣のオーダーサポーターとして、「これ取れる?」と聞いたら「取れます」「来月に回しましょう」と答えてくれる存在が必要です。

電子カルテとの完全連携ができるとここが可能になります。

ただ、電子カルテメーカーは連携を嫌がることがあります。

自動算定にあたるような機能を厚労省が嫌がるため、電子カルテメーカーも動きにくいのです。

例えばヘモグロビンA1cの検査を取る時に、月に1回、妊婦さんの場合は月に2回OKという基本ルールがあります。

ドクターが月に1回算定して、2回目が出た時にエラーを出して「取れません。

今回は値段なしのフリーで行きますか、それとも取らずに来月に回しますか」というエラーが欲しいのですが、これが自動算定にあたると厚労省が言っているのが現場のハードルです。

結局、事務を減らすためには医師を鍛えるトレーニングツールとしてレセプトシステムを使いたい。

AIに壁打ちするように、レセプトシステムに壁打ちをして診察できればいいと思います。

「取れる?」と聞いたら「取れません」と教えてくれるAIがあれば便利です。

例えばスクリーニング検査をする時に、「これは月に1回で先月取っています」「これは3ヶ月に1回」「骨量なんかは半年に1回」といったエラーがかかる条件を、先生たちは知らないことが多いのです。

事務さんは知っているので、今日は取れませんよとメモ書きを回して警告を出しますが、先生は見落としてやってしまう。

そこで先生と事務さんが喧嘩をするということをよく見ます。

コンピューターとなら喧嘩になりませんし、クリニック運営もしやすくなるはずです。

話がだらだらしてしまいましたが、結局先生と事務の関係が悪いのは、事務が指摘しなければいけない立場にいるからなんです。

これを脱却すると関係はもっと良くなるので、このツールを入れるだけでクリニックはよく回りそうですね。

(高山)電子カルテの端末上で別のソフトとして起動していて、喋ってくれればいいという感じですかね。

(大西)今のAIカルテがその仕組みですね。

先生が診察したオーダーを別ソフトがスクリーニングで見ていて、間違っていると思ったらアドバイスをくれる。

電子カルテは触っていないというオーバービュー方式であればいけるんじゃないかなと思います。

これにはクラウド電子カルテである必要があります。

Aというタブには電子カルテが走っていて、Bというタブにはレセプトシステムが走っていて、定期的に電子カルテでの行為を監視している。問題がある場合はアラートを出し続ける。

そうであれば、電子カルテメーカーと合体する必要がありません。

(高山)小さいiPadなどを置いておいてもいいですよね。

(大西)先生からすると、AIカルテがうまくいっている一つの理由はそこなんですよ。

連動してしまうと、電子カルテメーカーがノウハウを取り込もうとして下請けになってしまいます。

あえて連携しない選択肢を取ることで取り込まれずに済みます。

今AIカルテの世界でそれが起きてしまっていて、別メーカーが作ってきたものを電子カルテメーカーが標準採用にしてしまい、いずれAIカルテのメーカーは潰れてしまう可能性があります。

つっこんだ話になりますが、レセプトのシステムが取り込まれるのは得策ではありません。

取り込まれたくないのであれば、別タブで動くような仕組みにした方がいいです。

ベンチャー企業は電子カルテメーカーに近づきたいので、元々レセコンメーカーである企業と組みたがりますが、自社で作れると判断されて舵を切られてしまいます。

ここには気をつけた方がいいです。

今後考えるべきはサポーティングの部分、つまり導入して運用する会社をどう作り出すかという代理店制度ですね。

メーカーの下についている代理店とうまく組めれば面白いと思います。

すみません、公開コンサルのようになってしまいましたが。

(熊沢)ありがとうございます。大変勉強になります。

開業医へ向けたメッセージ

(高山)これからさらに広まっていき、スタッフの補充をしなくて済むようになるなど、だんだんと流れが変わってくるかなと思ってお聞きしていました。

今後5年10年かかるかもしれませんが、それが当たり前になる世界はクリニックの先生にとってありがたいことだと思います。

熊沢さんから、最後に開業医の皆さんへメッセージを一言いただけますでしょうか。

(熊沢)開業のタイミングでどのようにシステムを入れていくかというところですが、これからできる人間も少なくなっていく中で人材確保は大変になってくると思います。

その中でシステムで解決していくことになりますが、お医者さん自身が診療報酬の知識をつけてレセプト業務まで全てやるというのは現実的ではありません。

そこはシステムにある程度移譲していき、開業した時にわざわざ人材確保に困らなくていいような世界を作っていけるよう、我々も日々研鑽しております。

ぜひ我々のシステムを調べていただいて、どんなことをやっているのか知っていただけたらと思います。よろしくお願いします。

今回のまとめ

(高山)ありがとうございます。それではまとめに行きたいと思いますが、大西さん、今回のお話を伺ってどんな感想をお持ちでしょうか。

(大西)基本的にはレセプト点検はやらなくていい業務なんですよ。

だから先ほど熊沢さんがおっしゃったように、医師が勉強することも事務が勉強することもない世界です。

そもそも、メニューを覚えてレジを打つという、一般の企業ではあり得ないものが医療の世界では存在しているわけですよね。


だから、これは非常にナンセンスな業務で、そこはもうシステムに委ねてしまえばいいんです。

過去のプロセスで言うと、レセプトというものを作った背景は公的サービスです。国が管理下において価格設定をするので、不正がないようにいろんなルールや法律を作っている。

その法律が分からないから、弁護士みたいな立場で医療事務というのが存在しているわけです。

ただ、弁護士業務も税理士業務も今どんどんAIに変わっていくように、医療事務もAIに変わっていった時に、じゃあ最後に残るのって何かなとなったら、このレセプトをどう活用するかが一つのテーマになります。

なので、僕は「AIと喧嘩するな」というのが今回のまとめだと思うんですよね。

AIによって仕事がなくなるってビビるんだったら、AIをまず取り入れて、AIがやっているのに関わらずさぞ自分がやっているように見せる人が多分勝者です。

逆にAIと喧嘩する人たちは、遅かれ早かれ自分の仕事がなくなります。

だからぜひ熊沢さんのやっているサービスを、AIという優秀な自分のブレーンができたという風に考えてもらったらいいんじゃないかなというまとめでございます。

(高山)ありがとうございました。今後の熊沢さんのご活躍を期待して終わっていきたいと思います。本当にありがとうございました。

(熊沢)ありがとうございました。

(高山)少しでも気に入っていただけましたら、番組のフォローをぜひお願いします。新しいエピソードがいち早く届きます。

番組への感想はハッシュタグ「#院長が悩んだら聞くラジオ」をつけて投稿いただけると励みになります。

この番組は毎週月曜日の朝5時に配信予定です。それではまたポッドキャストでお会いしましょう。さよなら。

▶ゲスト紹介:熊澤 洸平氏(株式会社mutex 代表取締役 CEO)

東京大学電子情報工学科卒業。大学1年時からソフトウェア開発に関わるインターンを複数経験し、大学4年時に東京大学の同期とフードデリバリーサービスのメタサーチサービス、株式会社DeliSearchを起業。CTOとしてシステム全般の開発を担当。在学時の研究ではニューラルネットワークを用いた表記揺れ等の名寄せシステムを構築。

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