クリニックの開業規制:医師偏在対策から読み解く_『院長が悩んだら聴くラジオ』シーズン2_エピソード105全文書き起こし



(高山)おはようございます。パーソナリティのDOC WEB編集長、高山豊明です。

(大西)おはようございます。パーソナリティのMICTコンサルティング、大西大輔です。

(高山)院長が悩んだら聞くラジオ、第105回始まりました。

(大西)よろしくお願いします。今日のテーマは何でしょうか?

(高山)今日のテーマはですね、クリニックの開業規制です。

テーマ:クリニックの開業規制

(大西)開業規制の前に、医療法が変わって、12月に結構いろんな変更があったうちの一つが開業規制なんです。

これまでも開業規制をする、するという話は出ていましたが、法律が変わらないとできなかった。

しかし、法律が変わってしまったことで、かなり具体化してきました。

(高山)それでは、この後、クリニックの開業規制について深掘っていきたいと思います。よろしくお願いします。

(大西)お願いします。

なぜ今、開業規制が必要なのか?

(高山)まず、なぜ今、開業規制をする必要があるのでしょうか?

厚生労働省の資料を見ると、現状の課題として3つ挙げられています。

  1. 医師偏在は、一つの取り組みで是正が図られるものではない。
  2. 若手医師を対象とした、医師養成課程中心の対策が課題。
  3. へき地保険医療対策を超えた、取り組みが必要。

少し分かりにくい表現ですが、どういうことでしょうか。

(大西)分かりやすく言うと、まず1つ目は、何か一つ規制をしてもすぐに状況は変わらないので、総合的な対策パッケージを作りましょう、ということです。

2つ目は、例えば18歳で大学に入学し、医師になって研修を経て開業する、というこれまでのプロセスだけでなく、

シニアや中堅の医師がどうキャリアを築いていくか、という視点も必要だということです。

また、いきなり美容クリニックに就職したり、開業したりする、いわゆる「直(ちょく)美」の問題も課題視されています。

3つ目は、医師がいない「無医村」が増えているという問題です。これら3つの課題をどう解決していくか、ということが問われています。

医師偏在対策としての開業規制

(高山)つまり、医師偏在によって、「保険はあっても、医療サービスが受けられない」という地域が生じることが問題だということですね。

(大西)そうです。

(高山)医師偏在対策というと、過密地域をどうするか、というよりも、まずは医師が足りない地域をどうするか、という視点が重要になりますね。

(大西)これまで、大学病院から地域の民間病院やクリニックに医師が派遣される、という仕組みがありましたが、

大学病院自体の人手不足や、医師の働き方改革の影響で、派遣を打ち切るケースが増えています。

その結果、地方では急に医師がいなくなってしまう、という事態が起こっています。

どうしよう、どうしようという話が今出てきたわけです。

その背景には、やはりこれまでの医師の働き方がおかしい、大学病院から派遣される制度自体がおかしい、といったことがあると私は捉えています。

医師偏在の背景と分析

(高山)なるほど。現在の医師偏在の状況としては、医療ニーズに対してどのくらいの医師がいるのか、

将来の推移も踏まえた上で、患者の移動、つまり人口動態の話や、医師の性別・年齢分布も考慮すべきだとされていますが、

性別によって何か変化があるということでしょうか。

(大西)リタイアする年齢が関係してくるからです。

(高山)時系列で見ていく必要があるということですね。

(高山)あとは、医師偏在の種別として、エリアごとなのか、診療科目ごとなのか、

あるいは入院施設や外来といった機能が偏在しているのか、といった様々なKPIがあるということですね。

その中で各地域を見ていくと、医師の数が少ない地域と非常に多い地域があると。

そして、それを分析した結果、今回、特に特定のエリアに関しては、クリニックの開業を規制していくという方針が明確に出てきたということですね。

(大西)そうですね。

開業規制の具体的な内容

(高山)それでは、具体的にどのようなエリアが開業規制の対象になるのでしょうか。

(大西)基本的には計算式としては、「外来医師偏在区域」という基準なんですけど、

全国の医療機関の平均値を出して、1.5倍の「過重値面積あたり診療所数」、つまり面積あたりの診療所数が多い、要は密度ですよね。

だから人口で計算していないのが不思議ですよね。

(高山)これは人口密度とかではないのですか。

(大西)過重値面積なので、「同じエリアにたくさんクリニックは必要ない」という意味なんだと思います。

そうすると、上位10%というのが「1.5倍以上かつ10%」なので、例えばクリニックが10万件あって、そのうちの10%だと1万件くらい。

特に集中する地域として、東京都、京都、大阪、福岡、神戸、このあたりが候補だよ、というのが一応もう出ています。

(高山)これは、1.5倍以上ある地域ですよと。

この地域というのは、二次医療圏をベースにして考えているということですね。

(大西)そうです。全て二次医療圏で考えていますね。

(高山)二次医療圏単位で偏在を見ていっているということですね。

(大西)そうです。

(高山)逆に、少ない所というのも上げられていますよね。

(大西)北海道とかですね。東北、北海道あたりはもう少ないです。

関東でも埼玉の地方部などは少ないところに入っています。

北海道、青森、岩手といった東北系。

あと関東だと茨城、栃木、群馬、埼玉。

東京都だと島、神奈川県だと県西。

そして新潟、富山、石川と、ざっと見ていって、沖縄まで行くと、沖縄、宮古島と書いてあります。

これが全国下位4分の1なので、厚生労働省の考えとしては、医師が開業する場所をできるだけこの医師が少ない地域に行ってほしいという試みなので、

開業する場所すら自分で決められないというのは非常に怖いですよね。

(高山)そうですね。ただ今この全国下位4分の1であげられている地域というのは、

例えば過密している東京都に開業できないからといって、「じゃあ島に開業するか」みたいな話には単純にはなりませんよね。

(大西)ならないし、そこで開業して倒産するって話ですよね。

(高山)そうですよね。どういう風に経営を成り立たせるのかがセットにならないと、なかなか足は向きませんよね。

(大西)そうですね。結局、この地域にドクターがいないからといって、「こっちで開業してください」と言われても、

それに従わないとすると、もう開業を諦めるか、あるいは開業しないで継ぐか、ですよね。

(高山)そうですね。承継だったり、引き継いでいって。タバコ屋さんみたいな感じですよね、酒屋さんとか。

(大西)そうですね、面白いですね。酒屋さん、タバコ屋さんは結局コンビニになるんですよね。形を変えて。

だから新規開業は減って、M&A開業が増えるということなのかな。

(高山)承継移転みたいなのも、今後増えてくるのかなという感じがします。

ただ、医師側の気持ちを考えると、下位4分の1の区域というのは、やはり優先順位が低い。

高く設定する先生もいますけども、低いとすると、今挙げられた過密しているところ以外のところで考えていくということですよね。

(大西)下位4分の1に行ってほしいのでしょうけど、多分そこには行かないので。

例えば、さっき話していた東京都だと、都の中でも少ないエリア、おそらく北部の東の方が規制に入っていなかったので、

そっちで開業しようとするのでしょうけど。

(高山)さっき一緒に見ていたら、23区の中で過密と言われていないところ、規制がないところは、

江東、隅田、江戸川、葛飾、足立、荒川、この6つですね。

それ以外の23区は全部「多い」ということで、開業規制の対象になっているということですね。

ペナルティと新たなキャリアパス

(高山)もし規制対象地域で開業しようとした場合、どのようなペナルティがあるのでしょうか。

(大西)開業するにあたって、都道府県知事の許可制みたいに結局なるのですが、許可という言い方はしていません。

まず、半年前に「開業したいんですけど」と届け出をして、それが認められたら届け出できる。

認められないと「こうしてくれないでしょうか?」と勧告されるんです。

それを拒否するとペナルティを科すという制度なので、事前届け出制になった時点でもう面倒くさいな、という感じですね。

(高山)今までどこでも良かったのがそうじゃなくなってくる。

これって本当に先生にとっては、新規開業する時の物件選びとか、物件先との契約ごととか、内装を決めてレイアウトを決めて、

「じゃあ、いくらかかります」とか、事業計画とか、あと工事日程とかにもすごく関わってくるので、

開業しようと思ってたところでNGってなっちゃうと、すごく手戻りが激しいですよね。

(大西)元々、地域医療計画の中で病院はもうすでに規制が始まっていたんですよね。

これ以上病床を増やせないっていうエリアが決まっていて、そこではもうほとんど都道府県知事の権限で病床規制がされていたから、

やっと外来規制ができたという風に僕は捉えているんですね。

(高山)診療科目の偏りみたいなところって、どういう風に是正していくのですかね。

(大西)一応、今言われているのが、小児科、婦人科が劇的に少ないんですよね。

で、逆に皮膚科がすごく増えたりとかする。

そういうのを是正するためには、点数格差をつけなきゃいけないのだろうな、ということはあるのですが、

今回の改定では、一応小児科、産婦人科にはなんとなくその匂いは見えたけど、他の診療科にはちょっと見えなかった。

これから点数でやるか、もうベーシックインカムじゃないけど、

「この科で開業する場合はベースでこれだけ上げますよ」とするかとか、

色々考えないとですね。

(高山)今までの流れだと国の方針や自治体の方針に従ってやっていくと、

いわゆる加点されるというパターンがありましたけれども、今回はあまりないんですかね。

(大西)産婦人科くらい。産科は大きな加点がある。

それくらい劇的に減っているんですよね。

他の地域はちょっとそうでもなかったなという気がするので、一応2040年に向けて何をするかの中で医師偏在。

要はまずは医師の偏在を是正しましょう。あとは美容医療に関して取り締まりをしようみたいな流れもあるので。

(高山)取り締まりというとちょっとドキッとしますけど。

(大西)広告規制とか。難しいのが自由診療、オール自由診療でやる場合、厚労省は把握する術がないんです。

どんな人がいるのかどうなのか全然分からないので、美容医療に報告制度を作ろうとしていますね。

(高山)そのペナルティの1つとして、保険医療機関の指定期間が短くなるというのがあるんですね。

(大西)今回3年でしたね。元々6年というルールがあったけれど3年になってしまった。

基本、例えば6年してまた更新、更新としていけばいいんだろうけれど、3年して更新してくれなかったら開業終わりですからね。

だから普通の感覚の先生からすると、3年間開業したとしても3年以内に開業できる場所を探すだろうね。

(高山)3年の間に何か次を考えてねという期間ですよね。

(大西)ルールを考えるんじゃないかな。

ちょっとジャストアイデアで考えると、3年以内に新しい医療法人を買ってくるかな。

そんなことしていいのかな。

(高山)あとこれ3年間でっぱり応じなかった診療所に関しては、2年になるんです。

その2年でも対応しなかったらどうなるのかみたいなのは、ちょっと書いてないのかな。

保険医療機関指定期間を2年と言っているわけだから、もう取り上げますよという感じになるんですかね。

(大西)車の免許みたいですよね。

ゴールド免許なら何年とかあるじゃないですか。

(高山)この辺り、二次医療圏ごとの過密だということで考えているので、地域医療を成り立たせようという厚労省の大きな考え方があり、

ただ医師といっても人間なのでどこに住みたいかという権利がありますよね。

(大西)厚労省としては地方に関しては点数少し高めに設定していますからね。

地方部の加算ですね。

ただ、経済的インセンティブだけで人間が動くかという話ですよね。

どこで開業したいかというのは、例えば地元に住んでいる、住んでいるところで開業したい先生も多いし。

落下傘で開業してくる先生は、そこがいけると思っているから開業するわけで。

いけないところで国から補助を受けて開業するという先生の考え方はちょっと違うかもしれないですね。

多分未来の話で言うと、大学病院からクリニックに出向して、そこで定着させて開業を継いでもらうとか、

そんなことまで考えているんじゃないかな。

認定制度とキャリア形成への影響

(高山)1つのインセンティブとして考えられるのが、医師少数区域で勤務した医師を認定する制度ができるみたいですね。

(大西)結局、医師少数区域で開業するとか働いたことがある、経験がある人は、経済的インセンティブ、認定医師と書いてあるでしょう。

だから認定医師が何人いると、研修や旅費など全部国が持ちましょうと書いてあるけれど、開業した時のブランドに変わるのかもしれないですね。

(高山)一定の病院の管理者としての評価。

地域医療支援病院の管理者は認定医師でなければならないこととする、

ということなので、結局開業をというよりも、重要な管理者を担う人として認定されていくがゆえに、

生き残っていける医師としてということなんですかね。

1つはキャリアですね。

(大西)キャリアの中で管理者要件、地域医療支援病院や公的医療機関の、日赤や済生会とかね。

あとJCHOや労災病院とか、結構でかい病院の管理者は全部これやらなきゃいけなくなってくる。

これから、自分が将来管理者になっていく時に、1回地方に行くんだなと。

(高山)なるほど。それをできやすくするために、認定を取るといろんな経費が支援されるということで、

経済的なインセンティブも働きますということなんですね。

絶対潰れない病院の管理者ポストを用意しました。

この管理者ポストに就きたかったら認定取れるように医師少数区域の医療機関でやってきてくださいと、しかもこれ9年以上ですからね。

まあまあですよね。

(大西)9年以上で、その中で女性の場合は妊娠出産による中断は可と書いているから、そこも含めるみたいなね。

(高山)中断ですから、その分延びるんじゃないですか。

(大西)延びるけれど、いきなりリセットとかにはならないんでしょうね。

(高山)足し算になっていく。

(大西)ただこれが動き出したら、医師の就職場所すら規制がかかってくるみたいに、いろいろ反発もありそうだなという感じはしますね。

(高山)大手に入りたかったらこういう修行をしてきてくださいというような、社会一般にはあるような内容ではありますね。

(大西)商社とかと同じですよね。

東京に勤めたくても1回地方に飛んでからまた東京に戻ってくるじゃないですか。

そういう風なことで、やりやすいのが国立病院や、JCHO、労災病院、日赤、済生会。

こういうのはたくさん地方にあるからね。

今日の話のまとめとしては、こういう制度ができた時にどういう風に捉えるかという時に、制度は決まったこと、法律なので抗えない。

ただ、必ず抜け道があるんで。また考えていけばいいんじゃないかなと僕は思うけどね。

認定医師制度の現状と今後の展望

(高山)最後に言っていた医師少数区域で勤務した人を認定する制度は、実は最近始まったわけではなくて、

令和2年度から始まっていて、すでに累計684人になっていると。これ管理者ポスト足りますか?

(大西)全然足りないよ。

(高山)もうこれ充足していないですか?

(大西)病院が8400あるからね。

(高山)地域医療支援病院じゃないじゃないですか、8000病院は。

(大西)そうすると地域医療支援病院と考えると1000から2000だから、もうすぐ足りちゃうね。

(高山)充足は完全にはしていないものの、椅子取りゲームはもうかなり進んでいますという感じですね。

(大西)伸び率見ていると減ってきてるからね、令和5年は。

(からポストがなくなってきたんだなと。

(高山)やっているけれど結構大変という話なのか、9年頑張ればできるけれど、

9年なのでもうすでに認定でここまで来ていますから、

今その船に乗っている人で多分充足していますよね、これから新しくという感じではなくて。

引退していくから常に少数は入れ替えが必要で。

(大西)常に1000人ずつぐらいはストックがいるんじゃないかな。

(高山)そういうことですね。

(大西)だいたい管理者ポストって2年から4年とか。

長い人は長いけれどね。そうやって考えると、そういう人たちが定期的にこれぐらいの数は育成していけば

回るということを厚労省は思っているんだろうけれど、さてどうなるでしょうかという感じですね。

(高山)そうですね。その結果、平均例えば年間200人ぐらいずつ誕生させると思った時に、

少数地域のクリニックや医療機関の数が200人で済むのかという話ですよね。9

年間だから、かける9して1800人から2000人ぐらいをそういった少数区域に派遣するみたいな、こういう制度なんですね。

(大西)それで足りなかったら結局今度大学病院から事前にあなたは幹部候補生だから行ってくださいってなるんでしょうね。

出世争いのための制度ですね。

(高山)そう見えますけどね。ただ、本当に純粋にそういった問題に真正面から取り組んでくださる先生も多数いらっしゃるということもありますし。

ただ自由には利かないんですね、医療の世界は。

(大西)病床規制があるなら外来規制もあるでしょうという話で、どんどん外来の把握というのが重要になってきているね。

(高山)ということで今日は開業規制について深掘りしてきたんですけれども。

意外にクリニックだけの話ではなくて国全体としての医師偏在問題から発生しているので、

先生としてはこれから開業する地域が限定されてくるというのをまず頭に入れつつ、

長期的な経営戦略を考えていく必要が出てきていますというお話でしたね。

続きは次回にしたいと思います。今回も大西さんありがとうございました。

(大西)ありがとうございました。