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DOCWEB『院長が悩んだら聴くラジオ』この番組は開業医の皆さんが毎日機嫌よく過ごすための秘訣を語っていく番組です。 通勤時間や昼休みにゆるっとお聞きいただけると嬉しいです。
(高山)おはようございます。パーソナリティのDOC WEB編集長、高山豊明です。
(大西)おはようございます。パーソナリティのMICTコンサルティング、大西大輔です。
(高山)「院長が悩んだら聞くラジオ」、第94回が始まりました。大西さん、今回もよろしくお願いします。
(大西)よろしくお願いします。
今日のテーマは何でしょうか。
(高山)今日のテーマも引き続き「診療報酬改定」についてです。
昨年2023年末の12月25日に厚労省から発表された、診療報酬改定のより詳しい内容について解説していきたいと思います。
(大西)今回は「改定率」についてお話しします。
そもそも改定率というのは、財務省と厚労省、そして当時の高市経済安全保障担当大臣(※予算閣僚折衝の文脈)らが話し合って最終決定するものです。
12月20日の大臣折衝を経て決定した内容について詳しく見ていきましょう。
(高山)診療報酬の改定率について、詳しくお話を伺います。
30年ぶりの3%超え改定とその内訳
(高山)12月24日の協議を踏まえ、翌25日に発表された診療報酬の改定率は「プラス3.09%」でした。
この数字は、実は30年ぶりとなる3%台の改定です。1996年以来の規模となります。
1996年当時はバブル崩壊から6年が経過し、翌97年には山一証券が破綻したような時期でした。
それ以来、30年間にわたるデフレからの脱却を目指し、現在のインフレ基調を反映してプラス改定となりました。
(大西)インフレになると物価と賃金が上がります。
そのため、今回のプラス3.09%のうち、賃上げ分として1.70%を確保しました。
さらに物価高(食品・光熱費など)への対応として0.76%が充てられます。
これらを合わせると改定分の約8割を占めることになり、プラス改定とは言いつつも、実態としては例年並みだと感じています。
プラス分がほとんど人件費や物価高への対応に消えてしまうため、実質的にはプラマイゼロということですね。
医師会や病院団体からの「人件費と物価高をどうにかしてほしい」という要望に応える形にはなっていますが、これでもまだ足りないという声があるでしょう。
ただ、これに補助金が加わることで、賃金を毎年3%から5%程度引き上げていく狙いがあると考えられます。
看護補助者・事務職員の5.7%賃上げ
(大西)今回の改定で目新しいのは、事務職の扱いです。
前回の令和6年度改定(賃上げ部分の先行対応等)では事務職が除外されていましたが、今回は「看護補助者および事務職員」について、それぞれ5.7%の賃上げを行うよう明記されました。
(高山)5.7%というのは非常に大きな数字ですね。
(大西)他の職種が3.2%であるのに対し、前回見送られた事務職などは5.7%のベースアップが求められています。
それだけ事務職や看護補助者の確保が難しくなっているのが実情です。
(大西)看護師や医師と比較しても、これらの職種の給与水準が相対的に低いことが課題となっていました。
最近話題の「168万の壁」の問題も、主にこの層に該当します。
給与を5.7%引き上げても、年収の壁があるために労働時間を抑制せざるを得ず、結果として労働時間は増えない可能性が高いでしょう。
(高山)給与単価は上がっても、働く側としては壁を意識して調整することになるわけですね。
診療報酬のマイナス改定項目と「効率化」の正体
(大西)今回の診療報酬改定は、全体を引き上げ、賃上げも行い、物価高にも対応するという内容です。
その一方で、令和6年の改定の時に足せなかった「緊急対応分」というものがあります。
これがプラス0.44%とされていますが、診療所に対してはわずか0.02%で。
ここはもう、診療所にとっては「かすり傷」ぐらいの微々たるものですね。
(大西)前回のラジオでもお話ししましたが、「何をマイナスするのか」という部分も明確にされています。
お薬を後発品(ジェネリック)に置き換えること、在宅医療や訪問看護を適正化すること、そして長期処方やリフィル処方を加速させること。これらを合わせてマイナス0.15%となるわけです。
(大西)そうなると、すべてを計算すると今回の医科に関する改定率はプラス0.28%となります。
(高山)0.28%分がプラスということですね。
(大西)今の賃金上昇分や物価高騰分を全部差し引くと、プラス0.28%からマイナスの0.15%を引くことになります。結果として、ほぼプラマイゼロという改定内容ですね。
(高山)となると、クリニックにとっては経営上、大幅なプラスがあるわけではないということですか。
(大西)クリニックがやらなければならないのは、事務職も含めた人件費を上げることです。
一方で、マイナス項目の対象となっているリフィル処方や長期処方、お薬への対応に迫られます。前回もお話ししたように、お薬だけをもらいに来るような患者さんに対してどう対応していくか、現場は判断を求められています。
また、在宅や訪問看護で利益を上げているところは、少しマイナスの影響を受けそうだという感じがします。
(高山)資料にある「効率化」という言葉が気になります。「取り組み強化による効率化」の結果として0.15%マイナスになるのか、それとも効率化が達成できたから0.15%減らしますよ、という意味なのでしょうか。
(大西)これは「これらをすべて実施すると、全体として2年後には0.15%下がっている状態になる」という点数構成にする、という意味です。
(高山)協力をお願いします、ということですか。
(大西)協力というよりは、「そういう点数構成にするよ」という宣告ですね。今のままの体制で続けていると、結果的に0.15%マイナスになるような点数構成になったということです。
処方箋料を引き下げるといった具体的な措置のことですね。
(高山)言葉の使い方が非常に難しいですね。できるだけマイナスの要素を「前向き」に表現しているので、分かりづらくなっています。
(大西)今の点数に置き換えて解釈すると、「評価の適正化」とは実質的な「引き下げ」を指しています。こうした言葉の使い方がなされるのです。
(高山)「評価する」が引き上げで、「適正化」が引き下げ、ということですね。
(大西)その通りです。ここは専門外の方が一番つまずくところです。
開業規制と医師偏在対策の強化
(大西)これも非常に重要な点ですが、お話ししておきたいことがあります。資料の後ろの方にある「診療報酬制度関連事項」という項目です(3ページの3)。
ここに驚くようなことが書いてあります。
1つ目は「令和9年度におけるさらなる調整、および令和10年度以降の経済物価対応への対応の検討」です。
もしこのまま物価が急激に上がり続けて、令和8年の改定では財源が足りなくなった場合、なんと「来年も改定します」と書いてあるのです。
(大西)令和9年度予算編成において、加算・減算を含めたさらなる必要な調整を行う、ということです。
これを見ていると、来年も改定がありそうです。毎年改定されるのは大変だな、と思いながら見ています。
(高山)このように毎年微調整を行うというのは、今までもあったことですか。
(大西)最近は特に多いですね。なぜか改定が止まらない状況です。
(高山)2年に1回というペースではないのですね。
(大西)下手をすれば半年ごとに1回はやっているような感覚です。
今回も6月改定ですが、おそらく10月に積み残し分の改定が行われます。
6月と10月で見直して、またおかしければ来年の4月から改定がある。
ずっと改定作業が続いている感じです。
それだけ今の経営状況は難しくなっています。
世の中の経済や物価の乱高下が激しいですから。
「固定経済」である診療報酬において、一度値段を決めて2年後にまた上げるという仕組みでは、バッファーがないためそうせざるを得ないのでしょう。
事務・看護補助者の重点的な賃上げと、迫られる人員配置の適正化
2つ目も重要な内容です。
「今回の賃上げは、幅広い医療関係職種において物価上昇を超える賃上げを実現するためのものである。
特に、看護補助者と事務職員に対しては、他産業との人材獲得競争に直面しているので、そこを重点的に引き上げる」という方針です。
(高山)他産業から医療の現場に人を引っ張ってこよう、ということですね。
(大西)例えば高山さんが医師であれば医療機関にしか勤めませんが、事務職や看護補助者は違います。
どの業界にも行けるわけです。
国家資格が必要な職種ではないですから。
そのため、劇的な人材獲得競争に巻き込まれることになります。
よく笑い話で言われるのが、スーパーのレジ打ちやコンビニの店員さんと、医療事務の給料があまり変わらないという話です。
しかし、業務の難易度は圧倒的に医療事務の方が上です。そうなると、誰も来なくなってしまいます。
(高山)割に合わないですね。
(大西)本当に割に合わないです。
だから私が懸念しているのは、事務職の方々が「給料を上げてくれないなら他に移ります」というケースがさらに増えることです。
厚労省がそれを後押ししているようにも見えます。
(高山)実態そのものを反映しているのでしょう。
(大西)実態ではありますが、それを国が「高らかに宣言している」という点がポイントです。
今、現場で起きているのは、既存の職員の給与に比べて、新しく入ってきた職員の初任給の方が高いという逆転現象です。
(高山)そうですね。
(大西)そうなると、以前からいた職員が「辞めます」と言い出すので、全体の給料を上げざるを得ません。
そうして順番に上げていくと、医療現場は「利益のほとんどを給与に回している」という状態になります。
ここでもう1つ考えていただきたいのは、「その職員数は本当に適正ですか?」という問いです。
(高山)適正ということは、人員を絞るということですか。
(大西)そういうことです。
受付や看護補助者がそれほど多く必要なのか、という点を見直さなければならない時期に来ています。
「開業許可制」の衝撃:都市部への規制と診療報酬による地域格差の導入
(大西)3つ目は「開業規制」です。
「医師偏在対策のための対応」という項目です。
改正医療法により、外来医師が多い地区では、無床診療所(クリニック)の開設が、都道府県知事による「許可制」に変わります。
(高山)許可制、ですか。
(大西)これまでは届出をすれば自由に開業できましたし、都道府県知事が止める権利もありませんでした。
しかし今後は、知事の要請に従わない場合は「減算措置」を行うと明記されています。
(高山)減算。怖いですね。
(大西)知事の意向を無視して強引に開業するのなら、診療報酬の点数を引き下げるぞ、ということです。
(高山)そんなことが法的に可能なんですか。
(大西)法律で決めたので可能になります。
次に「医師多数区域」については「ディスインセンティブ」という言葉が使われています。
通常はやる気を引き出すインセンティブですが、ディスインセンティブはマイナスに働かせるものです。
これで首都圏などでの開業数を抑制する狙いだと思います。
(大西)一方で、「重点医師偏在対策支援区域」という、医師が不足している過疎地などでは、税金から「医師手当」を支給するそうです。
「医師手当事業に関する診療報酬等の財源確保」とあります。
地方で開業する場合は点数が高く、都心部で開業する場合は低い、という格差を明確につける仕組みを始めます。
今回の改定で議論されましたが間に合わなかったため、2年後の改定から本格導入されます。
経営情報の透明化と「その他の医業費用」へのメス
(大西)4つ目は、経営情報の透明化についてです。
医療法人は法律により経営情報を開示する義務がありますが、個人事業主のクリニックにはその義務がありません。
しかし、国は個人に対しても「出してほしい」と求めています。
(高山)なるほど。
(大西)経営実態がどんどん明らかになっていきます。不透明な部分があるクリニックは非常に厳しくなるでしょう。
(高山)「その他の医業費用」という項目を解明したい、と言っているのですね。
(大西)いわゆる「ざっくりとした雑費」のような形で計上されている費用があるのではないか、と疑っているわけです。
(高山)コストの使途を狙っているわけですね。
医業に直接関係のない、個人の私的なコストが含まれていないかメスを入れたいと。
(大西)怖い話ですが、これは脱税に近い議論にも発展しかねません。
(高山)これは経費に入るのか、入らないのか。
会計士や税理士の先生方も非常に頭を悩ませるところかもしれませんね。
(大西)「その他の医業費用」は昔からの慣習のようなルールで、クリニックの税務処理は比較的寛容な時代が続いていました。
「9割程度は医業費用として認めても良い」という空気感があったのです。
しかし今後は、領収書をすべて保管し、正しく細かく計上することが求められます。
特に「その他の医業費用」に含まれる接待交際費などは、実態が不透明です。
(高山)額にもよりますが、中小企業であれば年間600万円程度までは認められていますが。
(大西)しかし、その中身についても精査しろと言われているわけです。
(高山)提出すべきものは提出しますが、それが「ざっくりとしたその他の費用」や「雑費」として一括処理されていると、厳しく追及されるということですね。
(大西)「この費用の正体は何ですか?」と問われた際、家賃や光熱費は説明しやすいですが、福利厚生費、接待交際費、あるいは出張コストといったものがすべて透明化されていくことになります。
(高山)細部まで開示を求められるようになっていると。
(大西)それを実施しない場合、資料にある通り「医療法人以外の設置主体(個人事業主)は今は義務ではないが、今後は公表するように検討を進める」とされています。
(高山)個人事業主でも公表するのですね。
(大西)相当なインパクトです。これを見た瞬間、「交際費として使える分が減るな」と直感しました。
(高山)バランスをどこで取るか、という問題ですね。
今後の展望と補助金の活用
(大西)これから開業を検討されている先生方は、くれぐれもクリアな財務諸表を作成することを心がけてください。
どうやって正当に収益を上げるかを真剣に考えなければならない時代になっています。
「開業すればなんとかなる」という楽観的な時代は終わったのです。
(高山)先日、先生方から「大西さんの話はマイナスのことばかりだから、プラスの話もしてほしい」というリクエストをいただきました。
(大西)プラスの話といえば「補助金」です。
(高山)補助金は期待できそうですか。
(大西)かなり期待できます。
今回の補正予算に関連した補助金がすでに動き出しています。
次に2026年度の予算編成が進む際、そこでまた新たな補助金が盛り込まれるでしょう。
3月末までの現行の補助金と、これから始まる新しい補助金があります。次回は、この「補助金」について詳しく解説したいと思います。
(高山)薬価制度についても資料にありますが、これはクリニックからは少し遠い話でしょうか。
(大西)そうですね、クリニックの経営には直接的な影響は少ないので、今回は触れなくて大丈夫です。
(高山)ということで、今日は3.09%の内訳と、その背景にある厳しい実情について大西さんに詳しく解説していただきました。
次回は「補助金」についてのお話を楽しみにしております。
本日もありがとうございました。
(大西)ありがとうございました。
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DOCWEB編集部(一般社団法人 DOC TOKYO)
DOCWEB編集部は、2016年の設立以来、クリニック運営・医療業務・医療ITに関する情報を中心に、複数の医療機関やサービス提供事業者への取材・情報整理を通じて、医療現場と経営の実務に即した情報整理・比較を行っている編集チームです。
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