はじめに
新型コロナウイルス拡大により緊急事態宣言が再度発出され、
引き続き病院やクリニックなどの医療機関では、厳しい経営状況が続いています。
医療機関を取り巻く経営環境の変化をテーマに4回に渡ってお送りいたします。
withコロナで変わったこと
長引くコロナ禍の影響から、クリニックを取り巻く経営環境が大きく変化しています。
クリニック経営において、特に大きな影響をもたらしているのは「感染症」に対する社会意識の変化です。
現在、政府が提唱する「新たな生活様式」を守りながら生活することが余儀なくされており、「患者」の受療行動に大きな変化が生まれてきています。
感染症対策による季節系疾患の需要消失
コロナ禍では、
・マスク着用
・手洗い
・3密を避ける行動
など「感染症対策」が進むことで、確実にかぜ症状やインフルエンザ、花粉症などの季節系疾患が減少しています。
これらの疾患は、季節ごとに一定の需要が見込めており、この需要を注視して経営を行ってきたクリニックが多いと思います。
感染症対策によって、これらの需要が一気に消失してしまうと、当然患者数は大きく減少することになります。特に、子供の多い、小児科や耳鼻咽喉科などは受診患者数が落ち込み大きな影響をもたらしています。
働き方、娯楽など生活の変化
コロナ禍では「働き方改革」が一気に進んだと言えます。
一般企業では、感染症防止の観点からリモートワークが推奨され、会社への通勤が明らかに減少しました。
緊急事態宣言が出されている今「出社を7割削減」が打ち出され、その結果、公共交通機関の利用は大きく減っており、これも季節系疾患の減少に一役買っています。
また、娯楽や飲食、イベントなどについても、ソーシャルディスタンスの確保が推奨されており、「人が集まるところ」をできるだけ避けるような行動が進んでいます。
忘年会も新年会も自粛が進み、そのような行動から、ヒトとヒトの接触が減ることで感染症、そして季節系疾患の減少が進んでいます。
つまり、コロナ禍の個々の感染症予防の行動こそが、健康・予防活動にほかならず、病気になりにくい状況を作り出していると言えます。
リアル購買からオンライン購買へ
コロナ禍で購買行動にも大きな影響をもたらしています。
百貨店や専門店で気軽にショッピングをするという行動が大きく変わり、オンラインでの購買が一気に増加。リアル店舗での購買行動は、スーパーやドラッグストアなど日常生活に最低限必要なものに限定されてしまいました。
このオンラインでの消費行動は、医療の世界にも少しずつ浸透していくことは避けられないでしょう。
オンライン診療、オンライン服薬指導が進むことで、クリニックや薬局への受診行動に大きな変化がもたらされることが予想されます。
このように、コロナ禍の現状認識としては、感染対策が進むことで、予防意識も高まり、クリニックに来院する患者数の減少が起きており、このまま何も手を打たなければ今後もこの傾向は続いていくことが予想されます。
結果として、患者の医療サービスの消費に対する意識も変わろうとしており、今後、オンラインショッピングに慣れた患者たちは、
・自らでオンラインでできるもの(足りるもの)
・オンラインでは難しいもの
という線引きを行っていく。
その結果、それに対応できるクリニックと、できないクリニックの格差、すなわちデジタル機器を使いこなせるかどうかが大きな格差として影を落とす状況が進むのではないかと予想されます。
プロフィール
大西大輔 (おおにし だいすけ)
過去3000件を超える医療機関へのシステム導入の実績から、医療系の公的団体を中心に講演活動および執筆活動を行っております。また、診療所・病院・医療IT企業のコンサルティング行っています。
2001年 一橋大学大学院MBAコース修了
2001年 医療系コンサル会社に入社
2002年 医療IT総合展示場「メディプラザ」設立
2007年 東京、大阪、福岡の3拠点を管理する統括マネージャーに就任
2016年 コンサルタントとして独立し、「MICTコンサルティング」を設立
2018年 MICTコンサルティング株式会社を設立(法人化)
2019年 一般社団法人リンクア(医院教育)を設立