ナッジ理論で特定健診の受診率アップ へ_『院長が悩んだら聴くラジオ』シーズン2_エピソード118全文書き起こし

ナッジ理論で特定健診の受診率アップ へ_『院長が悩んだら聴くラジオ』シーズン2_エピソード118全文書き起こし

DOCWEB『院長が悩んだら聴くラジオ』この番組は開業医の皆さんが毎日機嫌よく過ごすための秘訣を語っていく番組です。 通勤時間や昼休みにゆるっとお聞きいただけると嬉しいです。

(高山)
おはようございます。パーソナリティのDOC WEB編集長、高山豊明です。

(大西)
おはようございます。パーソナリティのMICTコンサルティング、大西大輔です。

(高山)
院長が悩んだら聞くラジオ、第118回始まりました。

(大西)
よろしくお願いします。今日のテーマは何でしょうか?

(高山)
前回の引き続きなのですが、特定健診の受診率をアップするためにはどうすればいいのかという内容にしたいと思います。

(大西)
特定健診というものは、私も個人事業主なので必ず通知が来ます。

生活習慣病健診、特定健診。
年に1回受けましょう。

うちは基本的には受けようと思っているので、「じゃあ今年は、何月何日に受けよう」と。

受けてその結果をもとに、また病院に行くのがいいのか行かないのかみたいなことを決めているんですが、その受診率がやっぱりなかなか上がらないというのが国が困っていることなんですね。

特定健診をどうやったら受診率を高めるかっていうのは、これは国の政策目標なので、それをクリニックがどう関与していくのかっていうのを今日お話ししたいなと思います。

クリニックの経営と特定健診

(高山)
前回からの続きですが、患者さんの継続受診のためにクリニックができることということでお話ししています。

前回は生活習慣病の患者さんの来院を継続できるように、ナッジ理論の話がありましたが、今日は特定健診の受診率を自院でどう増やしていくのか。

また、単価がそんなに大きくないとも思うので、増やすべきなのかっていう経営視点からもお話しできればなと思っております。

(大西)
特定健診自体は、国と患者一部負担なので、すごく患者にとっては安い健診が受けられるわけですよね。

僕なんかはサラリーマンしてたので、企業健診っていうのは1円も払わないから、健診の時期が来たなと。

管理職になってきたら5万円補助で人間ドックに行くっていうのが前の会社のルールだったんですよ。

ただ、健診を絶対に受けないと面談でマイナス評価がされるっていう風に、会社が決めてたんですね。

コンサルティング会社なので、その辺は逆に健診を受けること、コンサルタントが健康じゃないとダメだよねっていうのがあった会社なので、かなり厳しかったんですよ。

だから、健診受けなかったり人間ドック受けないと、評価に組み込まれていないっていうのは結構怖かったですね。

もっと言っちゃうと、健診結果が悪いとまた結構叱られるっていう。

(高山)
人が働く会社ですからね。

(大西)
資本は我々人間なので。

僕らは健康経営もやってたので。

その時に、今厚労省が考えているのは、治療から予防への意識変容なんですけど、生活習慣病とか癌とかがそれに当たるのかな。

早めに発見して早めに治療しましょう。

その時に、先ほど高山さんがおっしゃったように、そこってそんなに収益元ではないよねと。

これを疎かにすると、患者が増えないんですよ。

(高山)
新患率を上げることにも寄与するということですか?

(大西)
新患率も上がるし、継続率も上がります。

(高山)
継続率も上がる可能性があると。

(大西)
例えば治療している間に、検査をしない患者もいるんですよ。
採血したくないと。

生活習慣病には2つ点数があって、あんまり採血しないタイプが1、毎回採血するタイプが2という点数の分け方なんですね。

1の人たちって、1年間採血しなかったりするんですね。

そうするとチェックが働かないので、1回だけ特定健診組み込むんですよ。そうすると病気的にも安定するというか。

(高山)
でも、ほとんどが健康な人が多いのかなとも思うんですけど、そうでもないですか?

(大西)
特定健診を受ければ、今高血圧の値が変わったので、ほとんどの人、高血圧に当たるんですよね。

これまで138とか9だったんですよ。
これが120台まで落としたので、ほとんどの人が高血圧か高血圧予備軍に当たる。

(高山)
私も今までは全くノーマークでしたが、マークされるようになりますね。

(大西)
健診内容に血圧を測るし、120、130なんて普通に出ちゃうので。

そうすると、「ちょっと血圧高いですね」って言われるわけですよ。

(高山)
病院で測ると高くなりますっていう人、多くないですか?

(大西)
多いです。あの機械もちょっと高くなるみたいだけどね。

水銀でやる方もいるじゃないですか。あっちの方が低く出ますね。
機械が高いですね。

厚労省としては、その血圧の値もそうだし、脂質異常の値、コレステロールの値。

そして、糖尿病のA1c。

このあたりを見ながら進めていくんだけど、血圧で引っ掛けちゃえば、ある程度生活習慣病管理料の対象になります。

対象になった瞬間に、クリニックにとっては収益元になると。

特定健診の受診率アップとナッジ理論

(高山)
スクリーニングっていう考えをして予防に役立つんだっていうことをマインドセットすれば、お互いにいいかもしれないですね。

(大西)
患者さんからすると、血圧って血圧の薬を飲み続ければ血が詰まることがないし、血圧高いっていうのは血管が詰まりがちっていう意味なので、それはコレステロールの問題もあるんだけど。

あとは、それ以外の脳梗塞とか心筋梗塞の予防になるので、やっぱり管理してほしい部分ですよね。

一方で、血圧がうんと低い人もやっぱり問題があって、今度は違う病気が潜んでいるかもしれないので。

ただ、どう、血圧って測ってる?高山さん。

(高山)
たまに、月1ぐらいですかね。

(大西)
病院に行ったらなんとなく言われてないけど測ってみたりするじゃない。

結構ちょっと高いとびっくりするじゃない。

(高山)
私はどちらかというと低い方なので、驚く機会は少ないんですけど。

病院に行くと血圧が下がるみたいなこともありますね。

(大西)
珍しいタイプ。

よく病院に行って血圧が上がっている方に「どうですか?」と聞いたら、「なんか病院来ると高いみたい」って言われて、「じゃあ裏でもう一回看護師さんに測ってもらいましょうね」なんて話をするんだけど。

これがすでに習慣化の第一歩目です。

血圧を測るか測らないかということによって、自分への健康への意識が向くんですよ。

(高山)
測定して数字が出てくると、自分事として捉えやすいですよね。

(大西)
日本人真面目なので、数字に結構敏感なんですよ。

だから、検査の結果の数値を見て「あれ、これ高いよね」って思わせるための健診なんです。

年に1回これをやらないとどうなるかって、10年間健診受けてなかった人たちは、ずっと健康意識が低いままということなんですよね。

特定健診って受診することが目的だけど、健康意識を高めるためにやってるんですよね。

(高山)
予防ですからね。

(大西)
で、ここでさっきのナッジ理論が出てくるわけですよね。

ちょっと肘を突つくのが健診の役割。

(高山) 
健診はですね、面倒なんですよ、患者からすると。

このナッジ理論からすると、この面倒な特定健診、クリニック側でできることって何かありますか?

大腸がん検診でのナッジ理論の活用例

(大西)
これ特定健診だけじゃなくて、がん検診でナッジ理論が取り入れられてて。

大腸がん検診でナッジ理論を使ってみたっていうのがネットで検索すると出てくるんですけど、「今回大腸がん検診を受けると、次回も受けられます」という制度があるんですね。

毎年毎年、大腸がん検診を受けていく人は、ちゃんと補助を出しましょうと。

一方で「今回大腸がん検診を受けないと、次回は受けられなくなる」。

「今回大腸がん検診を受けると、次回も受けられます」
「今回大腸がん検診を受けないと、次回は受けられません」

この2つのポスターを貼ったんですって。

そしたら、次回受けられなくなるっていうところの方が受診率が高かったらしい。

(高山)
損失回避、リスクヘッジですよね。

(大西)
自分の権利が失われることに対して、ものすごい抵抗がある。

ここもちょっとした文言の変化、ナッジなんですよね。

片方は「権利が継続するよ」、片方は「権利が失われるよ」。

当然、失われる方が患者の動きが良かった。

だからクリニックがやれることっていうのは、「あなたにはこういう権利があります。しかしこれしないと権利が失われます」みたいな説明とかポスターっていうのは結構いいのかな。

受診のハードルを下げる工夫

(高山)
今ちょっと私も考えてみたんですけど、ナッジ理論で言うところの面倒くささを回避する話と、自分事にするメッセージと、価値ですよね。

受診する価値が自分にあるのかっていう、ご褒美的なこと、メリットみたいな話で。

自分事にする時に、今の損失回避というかリスクヘッジというか、行かないことのデメリットがあると自分事になると。

「自分だけ受けられなくなる」みたいな形ですね。

あとは自分事にするっていうことは、同じような境遇の人が「何パーセントの人はすでに受診を済ませていますよ」と言われると、「あ、俺やってないね」「私やってないな」ってなる。

社会的に自分が逸脱していることが分かって、自分事になる。

あとはバリューっていう、受診するメリットで言うと、やっぱりご褒美系ですよね。

行くと何かもらえるとか、安くなるとか。

あとは褒められるもそうかもしれないです。

一番やっぱり厄介なのは「面倒くさい」なのかなと思って。

1つのアイデアなんですけど、できるかどうかは別として、やっぱり健診の対象者になった時点で、基本どこ病院に行くのかとか、いつ行くのかって患者さんが決めるじゃないですか。

だから本当は、仮予約をここで取りましたみたいに先にしてもらった方が楽なんですよ、患者としては。

「もし嫌だったら変えていいですよ」とすれば、自由度っていうのは確保されるのかなと。

これは国に提案したいですね。

ここまでやってあげると「面倒くさいな、予約ゼロからやるの」「どこの病院に行くのか自分で選ぶのが面倒」っていう人はハードル下がっていくなと。

あとは電話の予約をしなければいけないところがほとんどで、助成してもらえるクリニック一覧から選ぶのは、これは本当にちょっとしんどいですね、今の時代。

もっとネット予約で完結したい。

あとは何かのついでにできるようにしたい。

例えば、歯医者はちょっと分野が違うかもしれませんが、花粉症の受診のついでに特定健診も受けるとか。

抱き合わせで楽になると、面倒くささが半分になりますね。

歯科クリニックの先行事例

(大西)
今「歯医者は別」って言ったけど、実は歯医者が先進的なんだよね。

歯医者って虫歯の治療をした最後に、健診が付いてるんですよ。

1回目診察して、2回目ちょっと治療して、3回目型取って、4回目銀歯はめる。

その後にクリーニングが入っていて、次回3ヶ月に1回健診を入れるんですよ。

(高山)
なりますね。

(大西)
これがちゃんと診療報酬で評価してるんですね。

3ヶ月の定期健診を保険請求できる。

僕ら患者はよく分かんないけど、3ヶ月に1回ってチェックしてもらうことで、実は生活に組み込まれるので。

「次回は何月以降に予約取れますけどいつにしますか?」って質問されるんですよ。

そうすると「じゃあ8月1日でお願いします」と言うと、8月1日は予約取ってくれるんだけどね。

当然ネットで変更もできます。

ドタキャンした時はちゃんと連絡いただいて、日付変えられますよとかやってくれるので、歯科の世界は健診が定着している感じですね。

(高山)
私も2年ぐらい通うと離脱しちゃいますけど。

(大西)
僕、6年ぐらい通ってる。

(高山)
3年通って1回離脱して、もう1回行こうと思って行って2年でまた離脱して、今離脱中なんですけど。

そろそろ行かなきゃなという感じで。

虫歯がないけど定期でクリーニング行きましょうみたいな感じで、意識的にやれている時はいいんですけど、やっぱりちょっとしたきっかけなんですよ。

歯科衛生士さんのちょっとした言葉とか行動で、ハードルが一気に上がって、こっちが仕事とかで忙しいとそれと天秤にかけて行かなくなる。

「ちょっと今日行けなくなっちゃったんで」って言って、「いつにしますか?」「ちょっと今すぐ決められないんで」から離脱が始まります。

(大西)
その時に、高山さんから電話するのがきついので、ちょっと間を空けて、歯医者さんから連絡が行った方がいいんですよ。

離脱した患者へのアプローチ

(高山)
その歯医者さんからは一切電話来なかったです、追っかけの。

(大西)
これが結構重要な戦略で。

僕らいつも10月に健診受けましょう、1年経ったらお手紙出しましょう。

要は思い出させるっていう仕組みを作るようにして、離脱者一覧を作り、その離脱者に対してどのタイミングで再度声掛けをするのか。

これしつこすぎても良くないし、内容が強制的でもいけないよね。

その時に「長らく来ていませんね」なんて言葉を掛けちゃうと、わってなるわけですよ。

(高山)
なんか怒られたみたいな感じになりますね。

(大西)
僕が習った先生には「心配してますって送ればいいんじゃない?」って。

要は「何かの生活の変化があったんでしょうか」とか、「お忙しいと思いますけど」っていう優しさみたいなものを混ぜると、開いてもらいやすくなる。

(高山)
そうですね。
僕そうやって聞かれたら「そうなんです、ちょっと忙しくて」って言いやすいですもんね。

(大西)
「日々忙しく過ごされていることと思います。今年の夏はすごい暑いと思います。多分、体大変なこととかもあるから一度相談に来ませんか?」みたいなのを、すごくお母さんが子供を心配するかのように手紙を書くらしい。

(高山)
そこまでしなければいけないのかと内心お聞きになって思った人もいるのではないかなと思うんですけど、

むこうを向いている患者を振り向かせるとか、そういうこと具体的にやっていくことによって、国全体の医療費を削減していく、または健康な人を増やしていく、健康長寿社会を作っていくっていうのは、こういう地道な現場の取り組みになるかと思います。

これ一方で国の事業でもあるのであれば、こういうCRMのシステムとか仕組みなんかを導入する時に、ぜひ政府は補助金出してほしいなとも思いますし、

定着するための外部サービスとか使いやすくなるような支援の仕組み、ぜひ作ってもらいたいなって今聞いてて思いました。

診療報酬改定と今後の展望

(大西)
今回、令和6年の診療報酬改定で一部その兆しが見えて。

特定健診の受診率が低いと点数が下がる設定にしました。

これ生活習慣病管理料の重症化予防管理加算っていう点数なんですけど、この点数は令和10年から特定健診の受診率が低い医療機関は、本来取れる点より低い点数になっちゃう、というディスインセンティブと言いますけども、を用意した。

で、先ほど言ったように、今度はインセンティブに変えるならば、特定健診の受診率が高い医療機関は高い点数になり、加算が取れるとなれば頑張る、という厚労省もニンジンとムチみたいなやり方しか分かってない。

(高山)
もちろん強制したり義務化にする時は補助金出しますけど、なんかやっぱり面倒くささとか心理的なハードルをナッジ的に後押しするような施策ってあまりされないですよね。

(大西)
その時に自治体レベルで面白いところはやり始めてると思うんだよね。

何々市がこういう活動を始めましたって結構面白いことやってるところもあるので。

特定健診を受けたほうがいいよねっていう風潮にすると、その自治体だけ劇的に特定健診率が高いとか。

「何やったんだろうね」って言ったら、要は高齢者に対して1軒1軒、お手紙を市役所が書いてた。

健診を受けてほしいから書いたんですけど、そのお手紙もすごく工夫していて、「こうしたら簡単に申し込みができる」とか、取り次ぎをしてあげる。

要はさっきの面倒くさいハードルをどう下げるかっていうのが、ここのミソなんだろうね。

(高山)
確かにそれ自治体レベルでやることなのかもしれないですね、国じゃなくて。

(大西)
面白いですよね。

これ一瞬余談ですけど、オンライン資格確認の率が高いのって北陸らしいんですよ。

富山県とか結構高いんです。
昔からIT富山県強いんですよ。

何でかなと思ったら、やっぱり富山県とか富山市がちゃんとそういうことを意識的にやってるらしいんですよね。

要はそんなに人口の多い街でなければないほど把握がしやすいんですよね、患者の数。

1軒1軒役所が管理しやすいので、手厚いサービスができるので率が高い。
一番低いのは大体東京なんです。

(高山)
人数も多いですしね。

(大西)
デジタル化は進んでいるのに何かの国の政策の実行率は低いみたいな。

その時に自分が住んでる場所でかなり変わるんだけど、クリニックとして今日のまとめですけど。

ハードルは何なのか、そのハードルをどう下げるのか。

そしてどうやって報酬、ご褒美、リワードを出していくのかっていうことを考えてチャレンジしていくと、この特定健診受診率は上がっていきます。

だから、僕は国の政策を待っちゃダメだと思います。

クリニックそれぞれができることを実行すべきだと思います。

(高山)
クリニックにとってもちょっと面倒なことだったりとかハードルが上がる話なのかもしれないですけど、今日の話がナッジ的に少し背中を押す話になればいいなと思っております。

ということで続きは次回にしたいと思います。今回もありがとうございました。

(大西)
ありがとうございました。