
今回のトーク
- 「なぜ開業したのか」から始めるビジョン作り
- ビジョンと夢の違いとは?
- ビジョンには「誰に何を」を盛り込む
- スタッフ参加のクレド作りで生まれる責任感
- 他院見学で得られる、スタッフの気づき
- 自走型とは、自分で考えられる人の集まり
院長が悩んだら聞くラジオ。この番組は開業医の皆さんが機嫌よく過ごすための秘訣を語っていく番組です。悩んでいても、悩んでなくても、通勤時間や昼休みにゆるっと聞いていただけると嬉しいです。
PODCASTエピソードはこちら
(高山)
おはようございます。パーソナリティのDOC WEB編集長、高山豊明です。
(大西)
おはようございます。パーソナリティのMICTコンサルティング、大西大輔です。
(高山)
院長が悩んだら聞くラジオ、第134回始まりました。
(大西)
よろしくお願いします。今日のテーマは何でしょうか?
(高山)
前回に引き続き「クリニックのビジョンづくり」をテーマにしていきたいと思います。
(大西)
前回はビジョンの作り方というよりは、ビジョンがどれくらい大切か、クレドがどれくらい大切かという話をしました。
今回は実際に作ってみるときに注意点や、こういうマインドを入れた方が自走できるよということをお話しできたらいいなと思います。
(高山)
それではこの後よろしくお願いします。
(大西)
お願いします。
ビジョン作りのポイント:プロセスと言語化
(高山)
前回の振り返りなんですが、自走型組織を作る上でビジョンづくりが必要だという話だったんです。
自走型組織にならないビジョンづくりでは駄目で、院長が思い描くチームにスタッフが自然に動いていく、細かい口出しをしなくてもビジョン通りにみんなが考えて動いてくれるというクリニックを作るために、実はやっぱりビジョンが必要であるという話だったわけです。
今回はどんなビジョンを作ればいいのかというところ、それからビジョンは少し抽象的なので、
行動規範であるクレドを例えばこんな感じで作るといいよという事例やポイントについてお話しいただきたいと思うんですが、まずビジョンについていかがでしょうか。
(大西)
ビジョンって面白いなと思うんですけど、ビジョンの裏側にあるもの、なぜそのビジョンができたかのプロセスがすごく大事で。
いきなりボンとできているものではなくて、自分のこれまでの人生を延長していった上で、なぜ開業したのか、そしてどんなクリニックを作りたいのか、どんな地域で貢献をしたいのかということを考えるんですけど、これAIのプロンプトづくりに結構似ているなと思っていて。
(高山)
というと、どういうことですか?
(大西)
AIに指示するときに適当に指示すると適当な答えが返ってくるじゃないですか。
かなり丁寧に細かく理論立てて考える必要がある。
ビジョンもすごく理論立てて言葉を選ぶ必要がすごくあると思うんですよね。
その辺の設計を結構しっかりクリアにやってほしいなと思いますね。
(高山)
その設計というのは、例えばどういうふうにやっていくんですか?
(大西)
言葉選びから変えていきますね。
1つの言葉が浮かんだらその言葉に付随する言葉も全部考えていって、結局それがどんな人間を作るのか、どんな人間になってほしいのか、そこまで逆算して考えていくといいビジョンは作れます。
(高山)
前回、院長自身でしかビジョンは作れないという話があったじゃないですか。
それはやっぱり院長自身が今までの来し方、過去どういうふうに生き方をしていて、どんな経験をして、世の中をどういうふうにしていきたいのかということに対してビジョンとして表明していくということなのかなと思ったんですけど、
まず最初にやるべきことというのは過去の振り返りということになりますか?
(大西)
過去の振り返りと、その振り返りに基づいた未来への考えですね。
そのときにいつも考えなきゃいけないのは、1人でそれを成し遂げられないので、主語は「私」ではなくて「我々」になると思います。
「我々は何を実現するのか」がビジョンなので、「私は何を実現するのか」と書いてしまうと自走しないんですよね。
ビジョンと夢の違い:マイルストーンと解像度
(高山)
どのくらいの大きさのビジョンを描くといいんでしょう?
(大西)
それはもう完全にどれぐらい成長したいかによるんじゃないですか。
(高山)
成長というのは自分自身が、ですか?
(大西)
組織が、です。
(高山)
このクリニックをどう成長させていきたいのか、どのくらい成長させたいのかというサイズに合わせてビジョンを考えていく。
(大西)
地域で1番になりたいのか、日本で1番になりたいのかではビジョンが違いますからね。
(高山)
まずその辺のサイズ感も院長自身が思い描いて、自分の経験を生かして、これから先の人生で何を成し遂げたいかということをビジョンにしていく、言葉にしていくわけですね。
(大西)
それが1つのストーリーで、もう1つ大事なのは、どんな人と一緒に働きたいかも混ぜてほしいんですよね。
(高山)
それをビジョンに入れ込むというのはどういうふうにするんですか?
(大西)
理念に関して患者に対する思いと、スタッフに対する思いというのは、2つ3つビジョンがあるならば入れてもいいんじゃないかなと。
(高山)
ビジョンは1つの文にする必要はなくて何個かにしてもいいということですか?
(大西)
そうです。
対象が違うので。
地域社会に対して貢献するというビジョンがあった場合、その貢献のためにどういう仲間と一緒にやるのかと2つあってもいいんじゃないかなと。
(高山)
貢献のための仲間づくりなので、大きなビジョンが1つあって、それをどういう仲間とやり遂げたいのかというサブテーマみたいになるかもしれないですね。
(大西)
ただそのときの言葉選びのときに、僕いつも「成長」とか「学ぶ」とか、未来進行形(ing形)でできるビジョンにしてほしいなと伝えていますね。
(高山)
ビジョンって達成できるものなのか、達成しようと努力し続けることが大事というか目的なのかというと、どうなんでしょう?
(大西)
難しいけど、ビジョンと夢は違うのかもしれないですよね。
(高山)
ビジョンと夢は違う。
(大西)
ビジョンとドリームというのかな。
夢は叶わないから成長できるのであって、なかなか叶わないんですよね。
一方でビジョンは解像度を上げれば上げるほど叶いやすいんじゃないかなと僕は思っていて。
いつまでに何を達成する、いつまでに何を達成するというふうにマイルストーンを置いている先生は、結構その通り行っているかなという感じがします。
(高山)
言葉の定義に少し揺らぎがある気がしていて、理念というのは達成するというよりは達成し続ける姿を持っていく。
ビジョンというのは目標に近くて、例えば3年後にはこういう姿になっていようみたいなゴール設定に見えるんですけど、そんな理解で合っていますか?
(大西)
合っていると思います。
ただ3年後という近い未来ではなく、たぶん5年、10年後の未来になりますね。
(高山)
達成可能なものをビジョンと言う?
(大西)
達成可能になるまでとことん考えられるようなものでなければいけないです。
(高山)
夢物語ではなくて、単なる理想ではなくて、現実的に達成可能かつ有益なゴール設定ですね。
目標って結構数値に変えられたりするじゃないですか。
そういうのも混ざってくるというか、別で考えた方がいいですか?
(大西)
それはプランなので、事業計画として考えたらいいと思うんですけど。
どちらかというとビジョンというのは自分が成し遂げたいことをどれぐらい言語化できるかということなんですね。
その言語化したものが自分がしたいこと、あるいは仲間と一緒に成し遂げたいこと、そして評価あるいは採用なんかに全部影響するので、分かりやすければ分かりやすいほどいいんですよね。
ビジョンに盛り込むべき要素
(高山)
例えばビジョンというのはどんなものがありますか?
(大西)
誰に何を提供するのかというのは絶対盛り込む必要があるので、例えば地域社会なのか患者なのか、患者・家族と書いている先生もいるし、赤ちゃんからお年寄りまでと書いている人もいる。
それがまず「対象は何か」ですね。
次に具体的に何を提供するのかというときに「安心」とか「安全」とか「幸せ」とか、そんな言葉を使っていきますよね。
どうやって実現するのかというときに、今はできないかもしれないけれど未来成長できるようにということで「成長」なんて言葉を入れていきますね。
(高山)
そのくらいの粒度なわけですね。
(大西)
そのときに「地域社会に貢献する」という理念を考えちゃうと実行できないんですよね。
(高山)
度合いが全然分からないじゃないですか。
(大西)
地域社会に貢献するとは何かが分からないじゃないですか。
だから最近の先生たちはビジョンに「健康」と結構入れている先生が多いですね。
(高山)
国自体も今、健康寿命を延ばそうというのが大きな流れですもんね。
(大西)
そうです。健康寿命延伸というのが国のビジョンなので。
言い方はあれですけど、ピンピンコロリが幸せなわけじゃないですか。
いかに病気にならないか、いかに予防をしていくのか、いかに健康のまま最後を全うしていくのかというのが内科のビジョンだとするならば、それに則った方が今の年齢構成に合うでしょうね。
(高山)
患者側としてもそれを望んでいるわけで、長期間苦しむよりもできるだけ自立した生活を暮らしながら、家族にも負担がかかりますしね。
クレドの作成とスタッフの巻き込み
(大西)
ビジョンをもっと具体的に書かなきゃいけないのかというと、その先は今度クレドになってくると思いますね。
(高山)
クレドは前回の話だと行動規範、行動基準のようなものを落とし込むのかなという感じなんですが、
スタッフの行動なので、例えば患者に対してはこうしましょうとか、チーム内でのコミュニケーションはこういうふうにしましょうとか、内容的にはそんな感じですか?
(大西)
クレドを一緒に作ったクリニックはたくさんあるんですけど、ビジョンや理念を全部分解して、その中でみんなが普段心がけていることを全部書き出しをして、それを言葉に落としていくんです。
1時間や2時間かけてやっていく中で、やっぱり何かハマる行動指針が出てくるんですよね。
そのときにみんなの腹がドスンと落ちる。
プロセスがすごく大事で、みんなで「自分たちで決めたんだから守ろうよ」という責任感が出てくるみたいな。
(高山)
それは院長も参加してやるんですか?
(大西)
院長もやります。
院長はなるべく口を挟まないでいてもらって、例えば大きな組織だと3チームぐらいに分かれてやるんですね。
全員が発言しなければいけないので、1人ひとりが考えてみんなで意見を持ち寄る。
そうするとですね、面白いなと思うんですけど、10年もやっている組織はみんな考え方が似ているんですよね。
(高山)
自然に出来上がっているものがあるんですね、不文律が。
(大西)
そう、面白いです。
「同じことばかり言っている、この人たち」とか。
(高山)
それは良し悪しではなくて、そういう傾向があるということですよね。
(大西)
それはもう完全に肉体化したんだと思います、ちゃんとビジョンが。
(高山)
浸透していると見ていいということですか?
(大西)
浸透していると見ていいのでチャンスなんですよ。
あとは次の世代にバトンタッチするときに、いい言葉でバトンタッチしたいですよね。
(高山)
作り上げてきたものを言葉にして引き継げるようにしていくと。
(大西)
名言もそういうものじゃないですか。
「いい言葉だよね」というのは一生残るので。
(高山)
言語化するということが大事ですね。
他院の見学による気づきと組織の成長
(大西)
あとは未熟な組織は上手くいっている組織を真似するのもすごく大事だと思いますね。
(高山)
上手くいっている組織を見学などはできるんですか?
(大西)
できます。
基本的には上手くいっている組織は見学を受け入れているケースが多いので。
(高山)
どういうふうに探していけばいいですか?
(大西)
医師会の中で見学もできるだろうし、勉強会のときに見学をしたりとか。
やっぱり皆さんクリニックの勉強会に参加している人は多いですよね。
(高山)
上手くいっている・いっていないに関しては、そういうクリニックを探していくしかないんですかね?
「上手くいっていますか?」みたいに。
(大西)
「上手くいっていますか?」というか、まずは院長同士の出会いが先ですね。
自分が院長になって何年かすると、やっぱり「このままでいいんだろうか」と思うので、見聞を広めるために勉強会に出たいとかセミナーに参加したいとか、あるいは僕みたいなコンサルタントに相談したりしているうちに、
「あそこの先生いいからちょっと見学行く?」なんてことで斡旋したりすることもしていますね。
(高山)
誰かが仲介してくれるとやりやすいですよね。
(大西)
見学に行くと、びっくりするケースと、「自分たち結構できてるね」と思うケースと2種類ぐらいあるみたいで。
これ、ぜひスタッフと一緒に行ってほしいなと思うんですよね。
(高山)
スタッフのほうが気づきが多いかもしれないですね。
(大西)
帰りに話し合うのがすごくいいですね。
行きに「どんなクリニックだろうね」とワクワクしながら話をして、ホームページなども調べて、事前に質問する事項も全部書き出しておいて、見学が終わった後にまた感想を言い合い、自分のクリニックにどうするかを考える。
翌日や翌々日に今度フィードバックの勉強会をして、こういうのをスタッフと一緒にやると、そのスタッフは急に化けます。
見方が自分のベクトルではなくて外のベクトルに変わるので。
(高山)
外を見て見聞を広げるというのはすごく大事だと思いますし、「先生が言っていたことってこういうことだったんだ」という理解の一助になりますよね。
(大西)
あとは「先生すげえ」と思えるようになる。
(高山)
それはなぜですか?
(大西)
比較するからです。
比較するものがないので、すごいかどうか分からないんですよ。
色んなクリニックに行くと自分たちが上手くいっているところもやっぱりあるんですよね。
そうすると「自分たちすげえ」となるんですよね。
(高山)
比較できるところがないというのはその通りですね。
(大西)
隣の芝生は青く見えるので、行かないと青く見えちゃうんですよ。
でも行ってみたら黄色かったりするわけですよ。
(高山)
「うちのクリニックのほうができていたわ」みたいな感じはありますよね。
(大西)
だから研修のときに先生によく言われるのが、「他のクリニックの成功事例や、他のクリニックで上手くいっている話をしてあげてほしい」ということです。
やっぱりそういうのはよく言われますね。
「考える組織」を目指して
(高山)
ここまでビジョンとクレドを作ることによって自走型組織が作られていくという話をしてきましたけれども、クリニックでビジョンやクレドを作っているクリニックは多いんでしょうか、少ないんでしょうか?
(大西)
増えてきているんじゃないですか。
昔に比べるとずっと増えてきたし、理念教育というのも流行ってきていると思います。
(高山)
まだ取り組んでいないクリニックの先生に関してはぜひやっていただきたいなと思いますし、何年以上経ったらもうやる必要がないとかはありますか?どんなクリニックでもやった方がいいですか?
(大西)
ずっとやり続けてほしいです。
(高山)
開業したての先生も、10年20年やっていてクレドをやっていないところに関しても、今からでも遅くない、やった方がいいということですかね?
(大西)
人間は一生成長しているので、必ず定期的な棚卸しは必要だと思います。
(高山)
「今更自分のところはいいや」と思う先生もいるかもしれないですけれども、一旦第三者、大西さんみたいな人を入れてチェックするのもありかもしれないなと思いました。
(大西)
いつでも言っていただければやりますけど、
やっぱり一番大事なことは「考える組織」にしてほしいなというのが僕の願いですね。
自走型とは何かということの答えは、「自分で考えられる人間の集まりである」ということですね。
(高山)
自分で考えられるように指標を設定してあげて、ゴール設定だったりビジョンだったり行動規範のような物差しを設定してあげることによって、その範囲の中で自分たちで工夫して動いていける。
権限移譲に近い状態を生み出せるという感じがしました。
(大西)
はい。
(高山)
今回はこの辺にしまして、次回以降も「自走型組織はどうやって作ればいいんだ」ということで掘り下げていきたいと思います。
ビジョンやクレドを作りましょうというのは入り口で、チームのあり方という理想像を作っていくような作業だと思いますので、実際その後に日々どういうふうにしていけばいいのかということを引き続きやっていきたいと思います。
次回以降もよろしくお願いします。
大西さん、今回もありがとうございました。
(大西)
ありがとうございました。
エンディング
院長が悩んだら聴くラジオ、最後までお聴きいただきましてありがとうございました。少しでも気に入っていただけましたら番組のフォローをぜひお願いします。Spotifyの方はフォローボタン、Apple Podcastの方は右上のプラスボタンを押してください。新しいエピソードがいち早く届きます。番組への質問、感想もお待ちしております。それではまた毎週月曜日、ポッドキャストでお会いしましょう。さようなら。

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